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二つの祖国

 必ず楽しんでくれるはずだと隣にいる大学院生が薦めてくれた山崎豊子『二つの祖国』をようやく読み終えた。図書館で借りようと思ったら作者の訃報に接し、しばらく待つことにしてけっきょく読み始めたのは年が明けてからで、それから読了に3ヶ月もかかってしまった。限られた時間を利用して少しずつ読み進め、この3ヶ月という期間を確かに『二つの祖国』で楽しむことができた。いや楽しんだというよりも、受けた衝撃は予想外に大きいものだった。冒頭の日系人の強制収容から始まり、黒人に対してだけではない人種差別、一世や二世の語学力、戦争の本質、戦前の日本人の天皇に対する考え方、家族のありかた、俘虜の扱い、原爆投下の問題性、裁判の意義、宗教の必要性、自殺、などなど。読み進めば進むほど、この小説のテーマは広くなってゆき、その一つ一つに考えさせられた。あたりまえのことだが、日本の学校教育では教えてもらえないことがあまりに多過ぎることを思い知らされ、大人になり精神的な成熟を経てからこそあらゆる観点から吟味しなければ物事に対する意見など持ちようがないことを再認識させられた。作者の緻密で長期にわたる取材あってこその力作で、分野こそ違え僕も見倣いたい。娘に読むよう薦めたが、ほんの数十ページで挫折した。それで良かったかもしれない。中学生には刺激が強すぎる。娘が大人になったらその時にまた薦めよう。そして僕もまたその時に読み返したい。
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