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きつね馬

 妻の実家に帰省する度に読もうと決めている本がある。司馬遼太郎の『酔って候』だが、今回は2番目に収録されている『きつね馬』、島津久光の話である。全4話の最後に書かれているあとがきに「彼らは藩主なるがゆえに歴史の風当たりを最もはげしく受け、それを受けることによって痛烈な喜劇を演じさせられた」とある。厳密に言えば久光は藩主ではなかったが、藩主ならんとするがゆえにいっそう滑稽である。しかも人を両極端に分けてしまう司馬が書くのだから、そして彼を取り巻く志士たちと異次元で生きており、同情もしてやらねばとも思うが、後世の笑い者となってしまった彼の言動を追っておくことは確かに意義がある。「久光の上洛は、当人の意思とはべつに、幕末の情勢を一挙に革命前夜に落としいれたといっていい」ともあるように、また後の生麦事件も然り。現在の島津家当主は久光の玄孫らしいが、ご先祖様が司馬にこう書かれてはちょっとかわいそうでもある。
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